文房シリーズ デザイン雑記帳
こだわりのパーソナルファーニチャー
「文房シリーズ」デザイン雑記帳
2010年2月、文房シリーズに新商品ラインが加わり、既存のデスクの細部のデザイン、仕様を変更して2010モデルが発表された。
これを機会に、開発当初からのデザインの背景を書きとめてきたメモを整理してみた。
以下、コンテンツの順番は、およそ思いつくままで、体系的なものではない。写真は下手な文章を補いたいとできるだけ掲載しているが、開発途中のモデルも含んでおり最終商品とは異なる部分も多々あることをご了解いただきたい。
はじまり 二月堂のこと
文房シリーズのそもそもの始まりは二月堂だ。日本の家具の代表である二月堂を現代に翻訳してデザインしたらどうだろうというのが発端だ。
若い人たちは二月堂といってもなじみがないかもしれない。ここで、ごく簡単に二月堂について説明しておこう。
二月堂というのは小さな座卓だ。おおむね45センチ×90センチぐらいで、脚が折りたためるものもある。和室が少なくなって、その数激減だろうが、文机から料理やさんのお座敷まで現在でも多く使われている、いわばマルチパーパスの小座卓である。
二月堂の由来は、お水取りで有名な奈良の東大寺二月堂でお坊さんが食事をする食堂(じきどう)で使われたもので、正式には二月堂食堂机(にがつどうじきどうき)と言う。
お水取りは千二百年を超えて休むことなく継続されている、おそらく世界で最長の歴史をもつ祭りだろう。とすれば二月堂という小さな机も千年を超える歴史をもつことになる。さりとて、千年前の机を今も使っているということでは無いので誤解の無きよう願いたい。ただ現在の二月堂も、何代目になるのか知るよしもないが、千年受け継がれている原型に忠実に製作されていると聞いている。
本物は上記の現代二月堂と違って、お坊さんが質素な食事をとるための卓であり、大きさはおおよそ三分の二ぐらいのとても小さなものだ。
話を戻そう。二月堂は日本人の生活の中に脈々と受け継がれてきた。理由は単純で、とてもコンパクトなサイズと何にでも使える利便性、そして後に折りたたみ式という収納に便利な機能などに代表されよう。
現代日本の住空間は豊かになったとはいえ、まだ狭い。そんな日本の空間でも自分の居場所を作ることができる道具としての家具を意図して「文房シリーズ」をデザインしている。