連載「人と仕事」目次

漆師 矢沢光広さんのこと

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矢沢さんの漆

漆師 矢沢光広さん
漆師 矢沢光広さん

「日常の生活で、気に入った工芸品を使うのは楽しい事です。
私は古くなるほどに美しい、根来塗を手本にしながら、愛用していると味わいの深まる、そんな漆器をつくりたいと、日々工夫しております。」

これは矢沢さんの作品の箱に必ず入っている説明書の冒頭の文章からの引用だが、これこそ矢沢さんの漆を表現する一節だと思う。 矢沢さんの器には、不思議な魅力がある。その魅力を具体的に表現することは難しい。だから見て欲しい、手にとってほしいと思う、そして気に入ったら使ってみてほしいと思う。

漆の器

独断の分類だが、漆の器は、陶磁器や他の物と同様に「ハレ」と「ケ」によって選び方が異なるように思う。
見栄を張るわけではないが、お客様を迎えての食卓には、それなりの華やかさや緊張感があってよい。美しい蒔絵のお椀や、とても繊細な美しさを持った器などが、これにあたる。日々の器には、どんなに形が美しくても、張りつめた緊張感は似合わないと思う。

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株式会社古今研究所 代表取締役
稲生一平

アートディレクター、陶芸家
1942年生まれ。大手広告代理店に勤務後に独立。異色のプロデューサーとして活動。
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