ラウンジチェア・アームの小さな補足
モノ語りの文中にラウンジチェア・アームのオリジナルデザインのことに触れた。
2003年にアメリカで出版されたミラ ナカシマさんの本に、1955年のカタログの写真が掲載されている。その中にラウンジチェア・アームのオリジナルデザインと思われる椅子のイラストがある。
桜製作所から、ミラさんにご了解を得ていただくことを前提に、ここに写真を掲載した。
このカタログは、板に直接鉛筆で書かれたイラストというユニークなものだ。
写真の明らかにラウンジチェア・アームのオリジナルだと思われるデザインと1962年に発表された現在のモデルを比べてみると、とても面白い。
大きく変化しているポイントが3つある。
一つは座面の素材、二つめは脚の位置とアームの板と座面をとめる棒の位置とデザインだ。脚の位置は座面の素材、構造上の問題と直結しているので、変わって当然だろう。大変興味深いのは、真上から見たイラストのアームの板の最先端部分に注目してほしい。オリジナルは鋭角に切り落とされているが、現状モデルは本文でも触れたようにアームの板の先端部分は、最後の所で折り返している。とんがったアームの先端のきつさを和らげたのではなかろうか。
最後に背のスピンドルの本数が現在のモデルでは1本増えて、左右を含めて11本になっている。オリジナルデザインのイラストと比べてみると、背の上部の幅が広がっているように見える。デザイン上の理由だろうか、それとも強度の改善だろうか、そこは解らない。
少しだけミラさんの本を紹介しておきたい。
「Nature Form & Spirit The life and legacy of George Nakashima」というタイトルでアメリカで2003年に出版されている。日本語版が無いのが残念だが、ジョージ ナカシマに関する書籍はとても少なく、その中でもナカシマ好きにはとても貴重な一冊だと思う。
建築家、家具デザイナー、そして父としてのナカシマを、彼の仕事、作品を通して描いている。
そして興味深いのは、後半にミラさん自身のデザインによる作品も収録されている。美しい写真が沢山掲載されている270ページに及ぶ大作で、見ているだけでも楽しい本だ。
国内では、高松のジョージ ナカシマ記念館のミュージアムショップと東京銀座の桜ショップで販売しているが、在庫は確認された方がよいだろう。アマゾンでも入手可能のようだ。